SJ編集長エッセイ

WANDERLUST

特別編 003

OMM BIKE HAKUBA 2021

OMM BIKE 003

SJ編集長エッセイ

WANDERLUST

特別編 003

OMM BIKE HAKUBA 2021

物語はヒルクライムから別のストーリーへと続く

1つCPを見つけたことで、コツを見つけた気になった初心者(ウブ)な我々は、その後も軽快にCPを見つけ出して、ポイントを重ねていきます。

小川が流れ、田んぼは生命感に溢れ、緑の山々に囲まれた景色を連なって走る4台の自転車。小学生の頃、自転車に乗って友達と釣りに出掛けていたのを思い出す。やってることは夏休みの子供のまんまじゃないか。

夏休み満喫中のアラフォーとアラフィフ

ところが、そんな高揚した気分のまま地図上の等高線の線間隔がグッと狭くなったあたりに差し掛かると、明らかに傾斜角のおかしな上り坂が。。。不穏な空気感に包まれつつも登り進めると、いよいよ舗装路が途切れ、得体の知れない何かに誘われるように細く、急峻な登り道が暗い山の中へと続きます。

「なんか出て来そうだなぁ」
「トトロにこういうシーンなかったでしたっけ?」

でもこの先にCPは必ずあるという確信を胸に、ボクたち4人は森の中に踏み込んでいきます(悲しいかな、自転車を手で押しながら)。土はネチョネチョとぬかるみ、坂はどんどん激しくなり、森は暗くなる一方。

「もう引き返そう」、みんなが先頭を行くボクにテレパシーを送ってきます。超能力かと思いましたが、みんなの辛さそうな表情のせいかもしれません。

これは道ですか?いえ、我々が道と信じるものです。

自転車をその場に置いて、身軽に歩いて登れたら楽チンだけど、参加者は自転車と一緒にCPに向かわなくてはいけないルール。特にバイクの重量がヘビーなオカダさんは、さっきから「この坂、マジですか?」連発中 笑。

それでもようやく、これでもかというほど押し上がったその先にCPを発見。苦しい道の先にCPを見つけた時の嬉しさよ!だけど、そんな喜びも束の間のこと。CPチェックしたらすぐに、ぬかるんだ山道を自転車で駈け下り、次のCPへ。

なんだかんだ言いつつも、積極的にCPの得点をかき集めるボクらのチーム。この難所をクリアして、みんなのやる気にも勢いがついたようです。やる時はやる、ボクたちはそんな立派なチームだったのか。ここにきて完全に覚醒したのかもしれません。

そう言えばみんな日頃からトレーニングしているって言ってたし、実は高ポテンシャルチームだったのね。。。

だがしかし。

新たな発見を胸に次のCPへ向かう道が、これまた強烈な舗装路の登り坂。。。それでも我が高ポテンシャルチームは頑張って登る。いや登ってましたが、ついに途中で足が止まっちゃいました。

その場で地図を開きルートを再確認。

「この坂、めちゃくちゃ長いね。。。」

「これ、無理じゃないすか?」
「ですかね。。。」
「どうします。。。。?」

「。。。。。。。。。。。。。」

激しい意見のぶつかり合いもなく、これまで登ってきた道を引き返す決意をした我がチーム。
そうと決まれば、(鼻からそういう決まりだったかのように)登ってきた道を軽快にくだり、フラットな平地にあるCPを探すことにします。

時はお昼前。
ここまでの走行距離、約20km。

「そろそろお昼ですね、だいぶ走りましたね」
「うまい蕎麦でも食べたくないですか?」
「おー!いいですね」(一同盛り上がる)
「じゃあ、次のCPは蕎麦屋ということで 笑」
「でもこんな山の中で蕎麦屋なんて見つかるかなぁ」
「じゃあ、ルートから外れるかもしれませんが、人家のありそうなあっちに向かいますか」
「あー、それってもう競技関係なくなってるし 笑」

我がチーム、覚醒したかと思いましたが、どうやら勘違いでした。。。

とはいえ、こんなユルさが許容されるのもOMM BIKEという競技の魅力(じゃないですか?)。

だけども、我が意(胃)に反して蕎麦屋が見つからない。必然的に再びCP探しを継続することになります。いつかは蕎麦屋も見つかるよと高を括っていたのですが、表通りから離れると店が一切見当たらないし。。。

やがて地図に渡渉エリアと記された場所に辿り着きました。ここは白馬の人気スポットの一つで、清冽な白馬の川を歩いて渡れる有名な場所。茹だる暑さに冷たい清流の組み合わせは、夏の夜の生ビール(呑めない人なら、スイカかな?)くらい、無敵のコンビネーション。バイクを担いでこの川を渡るという、主催者のおもてなし(?)エリアです。確かに涼しそうだし、楽しそう。でも、お腹空きましたよ、マジで。

周囲を見回すと、このあたりは小さな観光地のような趣。

「ここって、レストランとかありそうじゃないですか」とスズキさん。

これはもしかして蕎麦屋が?

だけど期待に反して、見つかったのは蕎麦屋じゃなくて、ピザ専門店。ピ、ピザかぁ。嫌いじゃないけど、炎天下に炙られ続けてカラカラに干上がった飛び魚みたいなボクたちにとって、今はパサパサしたものを受け入れがたい。案の定、みんなも諦めないで蕎麦屋探しを継続しようということで合意します。この2日間で幾度となく確認された、揺るぎないチームの結束力よ。

熱暑でも足がちぎれそうに冷たい!誰だ?俺の足が知覚過敏なんて言ったヤツは!

足首から下が千切れそうなほど冷たい川を渡って自転車を向こう岸に運び、再びCPを2つほど見つけた頃にはもう14時近く。ゴール目標時刻の15時半まで残り1時間半を残すのみです。ちなみに、設定されたゴール時刻を少しでもオーバーすると、1分毎にペナルティタイムを課され、大きなマイナスになるとか。

「もう蕎麦屋、ダメじゃん」「もうすぐ14時だし、蕎麦屋も閉まっているかも」そんな悲しげな空気に包まれて、帰路に向かって黙々とペダルを漕ぐ男4人。

どんだけ蕎麦が好きなんだよ。。。。

と、ここでついに蕎麦屋を発見しました!その名も「蕎麦神」。
神は我々を見捨てなかったゾォ、と喜び勇んで店に飛び込む我がチーム。
すると、もう14時だというのにたくさんのお客さんが。。。

「これ、絶対においしいヤツやん。。。(感動)」

そして、その思惑通り、「蕎麦神」の蕎麦の旨かったことと言ったら。。。
本当にここまで我慢してよかった、うんうん。

こうしてボクたちは、ついに絶品の蕎麦とともに初日フィナーレを迎えたのです(まだ終わってないけど 笑)

食後。ゴールに近い場所まで帰ってきていたので、残り数カ所のCPを見つけつつ、ゆっくりとゴールであるキャンプ地にたどり着きました。当然ながら、指定時間内に余裕でゴール。

でも実はその時、全員が心密かにこう思っていました。

( あれ、俺たちひょっとして、結構いい順位にいるんじゃないか?)

蕎麦も食べずストイックに(結局最後に食べたけど)CPを拾い集めた結果、かなりポイントを獲得した気がします。ちなみに、全CPポイントを回ったと仮定して合計すると、1000ポイントになります。一番低いCPポイントが10ポイント、最高ポイントでも50ポイントだから、CPの数はおよそ30~40箇所ほどか。

じゃあボクたちがいくつのCPを見つけたかと言えば、全体の4割には届いた気がするかも(あやふや)。明日の2日目に残り半分を回れば、全てのCPは無理にしても、8割ぐらいいけるかもよ、と皮算用。ふふふ。

さて、となれば近くの温泉で今日1日の汗を流し、気持ちいい夕方の風に吹かれながら明日に向けて英気を養う、お楽しみのプチ宴会。でも、その前に本日の競技結果を受付によってチェックしておきましよう。

が、そこで見た衝撃の順位表で自分たちの甘さを思い知らされることに。

初日トップチームの獲得ポイント、なんと980点!
これって、ほぼ全てのCPを今日1日で回ってるっていうこと。
おそらく制限時間内(5時間)で、走行距離100kmを超えている思われます。
しかもCPを探し回りながら、しかもあの登り坂。

どんだけ頑張ったんだ、このチームの人たち。。。。

ちなみに我がチームの獲得ポイントは360点。
初日ランキングは総合76チーム中の59位。

お尻から数えた方が早い順位という堂々の負けっぷり。。。。。全然だめじゃん。
さっきまで、「結構良いとこいけてるんじゃないかなぁ」なんて言ってたのが恥ずかしい限りです。

でも、おそらくこの人たちは「蕎麦神」でおいしい蕎麦を食べられなかったんだよなぁ(負け惜しみ)

この惨敗で何かが吹っ切れた我がチーム。翌日の競技2日目は制限時間4時間の中、2時間半で早々に切り上げ、スキー場のゴンドラに乗って山頂カフェに直行。山頂のCITY BAKERYにて、めちゃくちゃおいしい焼き菓子をいただいて終了しました。。。ゆるすぎる 笑!

そんな楽しみ方も許容してもらえるOMM BIKE。競技とは言え、こんな感じで楽しく2日間遊べました。

コロナ禍でのイベントということで、運営側の皆さんには大変なご苦労もあったかと思われますが、こういうイベントでないと味わえない白馬の自然の素晴らしさを堪能させてもらうことができました。本当に感謝に尽きますね。

来年も同じチームで参加したいなぁ。

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